藁の家

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その後、家族にも内緒で私は彼らといろいろな手続きをした。 今後の自分の顔や体型を決めて、住む場所や学ぶ環境など、彼らはいろんな提案を持ってきてくれて……。 私なんかよりもよっぽど私の未来を考えてくれていた。 アイツの死刑が確定した翌日。 私が病室で履いていたスリッパが屋上で発見された。 採血しておいた私の血液を、屋上のスリッパをそろえた辺りの真下に位置する部分にまき散らし、私の自殺を偽装した。 死体無き自殺。 警察はありとあらゆる手を回した。 家族に別人の死体を見せたり、納棺する際、死体を見せなくてもいいように理由をつけて棺を開けさせなかったり。 私は自分の葬儀が行われていることを知りながら、別の土地で新しい名前を手に入れた。 霧島深雪。 世間で言うぽっちゃり系の身体を手に入れ、人から注目されないごくありふれた顔を身に着けて生きる場所を見つけた。 まずは小さな家で一人暮らしの練習をしたいと、アパートを借りて生活を始めた。
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