藁の家

3/10
前へ
/30ページ
次へ
彼らが提示した条件、研究実験の協力費用として支払われる金額やその他の報酬……。 まだ学生だった私にはピンとこない話で……。 ただひとつ。 私はただひとつの言葉を……しっかりと受け止めた。 「あなたのために私たちは生きます」 赤の他人が……。 まっすぐ私の目を見てそう断言した。 数日前に枯れたと思った涙が頬を伝った。 彼らが生きる意味が私自身だと言うなら…生きなきゃいけない。 家族を解放してあげなきゃいけない……。 私のせいで壊れた家族を……。 捨てなきゃ……。 私はベッドに横たわったまま、目を伏せるようにして頷いた。 その仕草を見た二人は深々と頭を下げた。 仕事の契約を取り付けた後の安堵の表情を浮かべることなく、彼らは真剣な表情で私の覚悟を全身で受け止めていた。 それは喜びなんかじゃない。 重い、重い、責任。 重圧に押しつぶされないように必死で私の目を見て言った。 「絶対に守り抜きます」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

163人が本棚に入れています
本棚に追加