藁の家

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一人は思っていたよりも楽だった。 最初の頃はしょっちゅうフラッシュバックで体調を崩すこともあったけれど、時が経つごとに少しずつ減っていった。 あの日の記憶が私を束縛して、『食べる』という行為自体に嫌悪することもあった。 飲み物だけで過ごす日も多かったけれど、少しずつ野菜を食べるようになった。 肉は食べれなくて…店で買い物をするだけでもあの日の事を思い出すから…逃げ出すことも多かった。 それでも研究員の真壁さんはよく家に来て食材を冷蔵庫に詰めていった。たまにご飯を作ってくれて、一緒に食べてくれて。 大江さんもたまに家に来たけれど、多くを語らずに真壁さんに言葉を託した。 少しずつ生きる方法を身に着けていった。通信教育で高校を卒業すると、私はネット販売の仕事を始めた。 会社の設立とか、よく分からなかったから真壁さんに相談したら、真壁さんは大学時代の友人にそう言った仕事をしている人がいるからと、いろいろ聞きだしてくれた。 その友人の方の力を借りて委託という形で通信販売業を始めた私は、いろいろ本を読んだりしながら販売について学んでいった。
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