藁の家

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真壁さんが家に来た時、まるでアクセサリーショップのようになっていく私の部屋を見て感嘆を漏らした。 そしていくつか売ってほしいと言われた。 お世話になっているのにお金はもらえないと、いくつか真壁さんにプレゼントした。 妹さんにプレゼントしたいと言っていたから、ケースに入れてラッピングもした。 その数日後、手紙が届いた。 どっかのアクセサリー会社だった。 名前は聞いたことがあったけれど、買い物に出歩かない私はブランドやショップの名前に疎い。 調べてみると、全国に3店ほど出店している激安アクセサリーショップで、最近売り上げを伸ばしている会社からの手紙だった。 しかも相手は副社長の肩書を持つ人だった。 『学生向けのアクセサリーとして当社であなたのデザインしたアクセサリーを販売させてください』 そんな内容の文面だった気がする。 どこから私のデザインが流れたかなど、すぐに分かった。 真壁さんが売り込んでくれたということも、販売にまで持ち込んでくれたこともすぐに分かった。 私を社会の一員として、なんとか繋ぎ止めようとしてくれている。 国から支給される研究の協力費用で生きるのではなく、自分で働いたお金で生きる……私が人間であるということを自覚させる、ただそのために恥を忍んで私の事を売り込んでくれた。
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