紅い部屋

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両手首を椅子の腰掛部分にロープで縛られ、足も椅子の両脚に縛り付けられた状態で、もう数日を過ごしている。 私はトイレにも行かせてもらえない。 椅子には丸い穴が開いていて、その下にはバケツが置かれていた。 まだ十代。 下着は脱がされ、セーラー服は汚物まみれになり、部屋中に異臭が漂っていた。 でも、それは排泄物だけの臭いではない。 この数日間、目にしてきたことが全て夢だったと誰か言って欲しい。 目を覚ましたらお母さんが手を握って、「悪い夢でも見てたのね」って言って欲しい。 そう思いながら、毎日ただ息をするだけ。 たまに呼吸を乱し、涙を流し、怯えて、頭を横に振る。 私の動作はただそれだけ。 その毎日から抜け出したくて、いろんなことを考えた。 そして、叶わないであろう脱出計画の成就を、自分の右手の人差し指の爪に託した。 ロープを少しずつ摩擦で切っていった。 時間の感覚はほとんどない。 おそらくここへ来てから五日は経ったと思う。 ロープが少しずつ緩くなってきているのが分かった。 もう少し…もう少し……。
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