紅い部屋

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時間の流れを忘れてそうしていると、ガチャガチャと音が聞こえた。 思わず身体がビクついた。 世話しなく動いていた指先は、そのまま凍り付く。 ギィ……。 低い音を立てて扉が開いた。 男が入ってきた。 肩に何かを担いでいる。 すぐにそれがなんなのか分かった。 「大人しくしてたか?」 男はそう問い掛けながら、目の前の台に担いできたものを下した。 「うぅぅ……」 それは低いうなり声をあげた。 台に置かれたのは二十代の女性だった。 彼女の身体を台の上に寝かせると、男は戸棚からハサミを取り出し、彼女の着ているものを全て切り裂いた。 台の上で彼女は裸にされたのだ。 そして、男はハサミを引き出しに戻し、今度は注射器を取り出した。 戸棚に並べられた小瓶をひとつ手に取ると、注射器の針を差し込んだ。 瓶から液体を吸い上げている。 そして瓶から針を抜くと、女性の腕に無造作に突き刺した。 女性は一瞬身体をビクつかせたけれど、徐々に身体の力を失っていった。 そして、自由の利かなくなった身体が自然とこちらに傾いて、うなだれた頭が私の方を見た。彼女と目が合う。
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