紅い部屋

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ここからどうすればいいだろう。 考えを巡らせた。 ― そうだ。この後、男はトレーを持って部屋を出ていく。その時がチャンスだ。男が出て行ったら足のロープをはずそう。そして男が再びこの部屋に戻ってくるとき、男に攻撃を仕掛けよう。 ― 私はそう決意すると、唇を噛んで物音も立てずに堪えた。 案の定、男はトレーを抱えて部屋を出て行った。 これまでトイレにさえ行かせてもらえないこの環境を恨んだけれど、今はこのおかげで逃げ出せるのだと実感する。 男は私に近づいてもロープの状態を確認することはなかった。もしも確認されていたなら、途中で新しいロープに変えられていたかもしれない。このロープを切ることはなかったかもしれない。 手のひらに握りしめたロープをそっと床に下すと、足首のロープに手を掛けた。 うまくほどけなくてイライラした。 そして、ふと思い出した。 スカートのポケットに櫛が入っていることを。 慌ててポケットをまさぐった。 ハンカチとティッシュ、手鏡、そして櫛が出てきた。 櫛をわしづかみにすると髪を梳く部分でロープを擦った。 歯がすぐにぼろぼろになったけど、今度は柄の部分をロープに食い込ませた。グリグリと上下左右に力いっぱい引っ張る。 時間はかかったけど片足のロープがほどけた。
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