再会

20/20
2022人が本棚に入れています
本棚に追加
/299ページ
 五十嵐の口元が緩んでいる気がした。声もなんだか震えている。 「ちょっと面白くて笑った」 笑いたければ笑えよ、と尚人は投げやりな気分になる。性格を批判されるよりはマシだ。 「だけど――笑ってる場合じゃないのかもな」 五十嵐の口角が下がった。含み笑いも消えて、真剣な口調になる。 「ちょっとっていうか――かなりおまえ、おかしくない?」  尚人は思わず、五十嵐の顔を見上げた。声が。彼の声が、呆れではなく心配そうなそれに聞こえたからだ。――だから、言いたくなった。 「俺、本当に人の顔が分からないんだ。失顔症ってやつで――親の顔も、自分の顔も、わからないんだ」
/299ページ

最初のコメントを投稿しよう!