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グループデート
翌日の土曜日。朝の七時四十五分。JR舞浜駅の改札を出た時点で、尚人はすでに気が滅入っていた。駅構内は人待ちの人だらけだ。パーク内に入ったら、もっとすごいことになっていそうでうんざりしてしまう。唯一の救いは、天気予報が外れて晴天になったことか。雲ひとつなく、色むらのない水色の空を、ずっと眺めていたい気分になる。
待ち合わせの時間を五分過ぎた。外にある切符券売機の前で三人を待っていると、突然目の前に人が現れて、声をかけられた。
「お、目立つの着てきたな」
「あ、えっと、えー、五十嵐?」
声で判断した。だいぶ五十嵐の声に耳が慣れてきていた。低音で抑揚のない地声。でも聞き取りやすい。彼が馬鹿笑いをするとどういう声の上がり方をするのか、少し興味が湧いた。
「そうだよ。当たり前だろ。――俺も赤だよ。被ったな」
たしかに、五十嵐も赤いTシャツを着ている。無地だったが、丸首の襟にステッチが施されていて、ちょっとおしゃれな感じがした。
「じゃ、行くか」
「え? ふたりは?」
「もう園のゲートの前で待ってる。早く行くぞ」
さっさと歩きだす五十嵐を、慌てて追いかける。ここではぐれたら、もう会えない気がした。
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