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昨晩のうちに、準備は万端にしておいた。有料のディズニーの地図アプリをダウンロードして、操作方法も予習しておいた。使う機会がないことを祈るが、もしものときにこれがあれば、安心だった。自分の現在の居場所が表示されるし、目的地を入力すれば最短の道順を教えてくれる。
五十嵐が、そこまでする? と呆れた声を出した。
「地図ならパーク内にいっぱい置いてあるじゃん」
その地図は使い物にならないのだ。自分がどこにいるかわらなくなるのだから。
「とにかく女の子にはバレたくないんだ。方向音痴ってこと」
「わかってるって。はぐれないように気を付ける。だから風無は、坂下さんと仲良くしててな」
「べつにいいけど――坂下さんって、五十嵐に気があるよな」
「それは知ってる。でも俺が興味あるのって桂木さんだから」
その桂木は、尚人に興味があるらしい。一方通行だらけの相関図だ。
「風無はどっちにも興味ないんだよな」
尚人は頷いた。本当にふたりの女性に関心を持てなかった。これから始まるデートで、気になる相手ができたりするのだろうか。そうなったら勿論嬉しいが、そんな淡い期待よりも、迷子になって醜態を晒すのだけは避けたい――そんな思いばかりが、尚人の頭を占めていた。
女性陣と合流すると、開口一番「あれーペアルックみたい」と突っ込みを入れられた。
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