グループデート

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 それに、この広いテーマパークで思うがままに歩き回り、ちゃんと皆の元に帰ることができれば、自分に自信が持てる気がした。尚人は目的地に「トイレ」と入力した。 事件はトイレから出たあとに起こった。  スリープ状態になったスマホを指でスライドし、勝手に落ちてしまった地図アプリを開きなおした――のに、起動しない。 「あれ?」  何度もアプリボタンを押したが、結果は同じだった。  ――なぜっ?!  おまけにスマホのバッテリー残量も三十パーセントを切っている。時間を確認すると十四時三十分。スモールワールドの列を離れてから二十分は経っている。 「でも、あと一時間余裕あるわけだし」  とひとりごちて、自分を落ちつかせる。 LINEの新着が届いていることに気が付き画面を開くと、焦りに追い打ちをかけるような吹き出しが目に入って来る。 『予定より早く順番来そうだよ。早く戻ってきて』  坂下のメッセージを受けて、五十嵐が『もう少しかかるよ。ポップコーン買うのに三十待ち。ケース入り高いなー』と返事をしていた。  とにかく、あまりのんびりとはしていられない。尚人が戻らなければ、彼女たちは順番が来てもアトラクションに乗れず、乗り場の脇に追いやられて待つことになるのだろう。そんなことになったら、ぜったい恨まれそうだ。     
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