グループデート

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十年以上前だが、一度乗ったことがあるアトラクションなのだ。朧げな記憶の断片をこそぎ取り、破れかぶれな説明をする。その甲斐あって、女性がなにか閃いたように両手を合わせた。 「わかった。あれだ。船と人形が出てくるやつね。まっすぐ行って突き当たったところよ」  尚人は礼を言って、女性に言われた通りに直進した。道は込んでいた。子連れの客が多い。ベビーカーを引いて、脇に小さい子供を歩かせている母親が、疲れを含ませた声で、なにやら注意をしている。尚人の横をのんびりと通りすぎる。同じ帽子をかぶったカップルも、何組も視界に入る。同じ人間が行進してくるような錯覚にとらわれ、尚人は地面に視線を這わせて、歩き続けた。日差しを受けた地面の熱さが、足の裏に伝わってくる。 「ここか?」  突き当った場所には、行列ができていた。うねうねとトグロを巻いたような列から、坂下と桂木を探そうとして、違和感を覚えた。どうも違う気がした。目の前の建物に見覚えがなかった。  列の最後尾にいる人になんのアトラクションか尋ねると、「カリブの海賊」と言われた。     
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