グループデート

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迷子の子供は、大声で泣けば良い。周りの大人が勝手に解決してくれる。ちょっとうらやましい。 電話が切れたあとも、尚人は店の前で突っ立っていた。迷子の鉄則に従っているのだ。迷子になったらむやみやたらに、動かない。見つけてもらうのを待つこと――母親の言いつけ。 七歳のときも、このテーマパークで迷子になった。母親も方向音痴で相貌失認だった。だから、母親はあてにならなかった。兄が先頭になって歩き、そのあとを母が歩く。最後が尚人だった。父親も来てくれれば心強いのだが、入場料金がかさむという理由で、母親だけが子供たちに付き添った。実は母親が一番ディズニーに行きたかった、という話もあるが。 ひとつ年上の兄は方向感覚が優れていたものの、気分屋の一面があった。虫の好かないことがあると、母親の制止を振り切って走り出し、尚人たちを撒いた。わざとだ。母親と弟が迷子になってあっちこっち彷徨のを、陰でこっそり窺っていたのだ。     
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