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兄は普通
風呂から上がりパジャマに着替えた尚人は、自室で明日の準備をしたあと、隣の部屋のドアをノックした。もう夜中の二時を過ぎているのに、兄の部屋には煌々と明かりがついている。
「兄貴、服貸してよ」
「服? デートか、羨ましいな、この」
兄の将生(まさき)は、尚人に背中を向けたまま、パソコンのキーボードを音を立てて打ち続けている。うるさかった。
「明日ディズニー行くことになったから。目立つ感じの、でもダサくないやつ貸して」
「難しい注文だなあ、それは。何色がいい? 黄色だと目立つぞ。スポンジボブなんかどうだ。アングリ―バードもいいな。赤いし、眉毛ぶっといしな」
ぼそぼそした声は、キータッチに音量が負けている。
「アングリ―バードにする」
アングリ―バードの、味付け海苔のように太い眉毛が尚人も気に入っていた。分かりやすい顔だと思う。アニメや漫画の顔なら、尚人にも多少個々を見分けることができる。たぶん、それらに出てくるキャラクターが、だいぶデフォルメされているからだ。
「よし。タンスに入ってるから勝手に持ってけ」
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