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肝試しは慎重に…
とある地方都市にある廃墟のT病院は、前々からいくつかの噂があった。
一つはその昔、院長が死んだ患者の臓器をこっそり抜いて、闇の組織に売り飛ばし大儲けをしていたが、真実を知り悲しみに狂った遺族達に殺されてしまった。
その死体はまだあの病院のどこかにあるらしいというもの。
もう一つは、殺された院長はその後悪霊となり、夜な夜な新たな臓器をもとめて院内を彷徨っている。
もし院長に捕まったら最後、腹を切り裂かれ臓器をみんな抜き取られてしまうらしいというもの。
T病院はそんな噂の衣を身にまとい少しずつ朽ちていき、ついには廃墟と呼ばれるにふさわしい姿へと変化していった。
その変化は内部も同様でいつ倒壊してもおかしくないほどだった。
そしてついに取り壊しが決定となり、その姿を見せるのも後何日かに迫った。
◆
廃墟した病院やら工場やら民家やら、いつの時代もそういった場所には恐いもの見たさの若者達が肝試しにと遠方からもやってくる。
たいていは不気味な雰囲気の中、おっかなびっくり歩いて回り何事もなく出てくるのだが、ここ何年かのT病院は違った。
院長と思われる白衣の男の幽霊が何度も目撃されるようになったのだ。
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