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山本が佐々木に目配せし、それに応えるように佐々木が小さく頷いたのを睦美は見逃さなかった。
「ずばり、橋本さんのことです。橋本さん、素敵な男性ですよねえ?」
山本からバトンタッチされた佐々木が口を開いた。
「え、ええ。まあ、そうね」
聡子の声が裏返る。それから、慌てて付け加えた。
「だけどちょっと待って。私には仲をとりもってあげることなんてできないわよ」
聡子なりに嫌な予感を察知したらしかった。
山本と佐々木は互いに顔を見合わせてから、笑い始めた。悪戯なチェシャ猫のような笑い方だ。
「いやだ、西川さんてば。そんな図々しいお願いなんてしませんから、安心してください」
「そうですよお。そうじゃなくて、ただ、西川さんは橋本さんのことどう思ってるのかなって」
「え……?」
さりげなく本題へ切り込んだのは、佐々木のほうだった。やはり若さというのは、こわい。睦美は心の中でくわばらくわばらと唱える。聡子はといえば、顔をこわばらせたまま、食事の手がぱたりと止まってしまった。
「なにを急に。どうもこうも私は別に……」
「えー、だって。西川さん、橋本さんのこと絶対気になってますよね。ぶっちゃけ好きなんですよね?」
佐々木が聡子ににじり寄る。
いくらなんでもぶっちゃけすぎではないかと、睦美はひやひやしながら、なりゆきを見守る。やはりくるべきではなかったのだ。パスタはおいしくて、止まらないけれど。
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