向かい席の彼女の恋

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 睦美の予想に反して、一週間が過ぎても聡子の様子はおかしなままだった。  レースのハンカチを口に当て、「くしゅん」とか「こんこん」とかごく控えめに咳やくしゃみをしている。おかげで冷たいものが空から降ってくることはなくなった。  それだけではない。  服装もシックな色合いのスーツや女性らしいドレープのきいたワンピースに変わった。今まで見たこともない服ばかりだから、新調したのかもしれない。  メイクは派手めのものから、落ち着いた深みのあるものへと変わった。見た目の印象というのは、ばかにできないものだ。人間に値打ちを付けられるなら、今の聡子はちょっとプレミアが付いた感じである。  あれだけ厳しく接していた若手の女子社員にもやさしくなった。教え方も、注意の仕方も、まるで別人だった。 (いったい、どうしちゃったんだろう?)  睦美はパソコンごしに聡子を観察し、首をひねらざるおえなかった。 本当にすべては恋する女ごころ――つまりは乙女ごころのなせるわざだというのだろうか?  どうにも腑に落ちない思いで、コーヒーに手を伸ばす。
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