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冬の穏やかな日差しが差し込む気持ちの良い窓際の席。外のテラスでは、シェフ自ら栽培しているハーブが葉を揺らしている。もちろん、どれも店の料理に使われるものだ。
睦美は前菜の生ハムとルッコラのサラダをゆっくりと味わっていた。この店特製のドレッシングもとてもおいしい。手間暇かけなければ、なかなか出せない味だろう。山本と佐々木は先ほどから「おいしー」ときゃあきゃあ騒いでいる。
「本当においしいわ。こんなレストランがあるなんて知らなかった。山本さんも佐々木さんも今日は誘ってくれて、ありがとう」
聡子が、後輩たちに礼を言った。聡子らしからぬふるまいだが、これが今の彼女なのだから仕方がない。睦美はそう自分に言い聞かせる。
「よかった。喜んでもらえて安心しました。わたし、じつは前から西川さんとはランチご一緒したかったんですよ」
山本は心にもないであろうことをさらりと口にしている。
メインのパスタが運ばれてきた。もちろん、ボンゴレ・ビアンコだ。睦美は待ってましたとばかりに、早速口を付ける。
「それに、今日はちょっと西川さんにお聞きしたいことがありまして」
「なにかしら? 私でよければ、なんでも聞いて」
ほらきた、と思った睦美とは違い、聡子はこれからされるであろう質問については、まったく予測していないようだった。純粋に後輩からの質問に答える気満々だ。
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