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あ、、ひろ、、
私は病室にいる博美(ひろみ)を呼ぼうとしたのを止めた。
止めた理由は、知らない男の人と話していたからだ。
博美は泣き出した。
私は怖くなって7階のナース・ステーションの前を横切ってエレベーターに駆け込んだ。
エレベーターの中には、赤い服を着た女が壁にもたれかかって外を眺めていた。なにかお見舞いの帰りだろうか、、。にしては、派手だ。
「10年前と比べて、早くなったわよね。エレベーター、、、。」
赤い服の女が口を開いた。
10年前…?
私は何のこと?と首を傾げたのを見て赤い服の女がくすっと笑い続けた。
「ほら、一瞬で1階まで辿り着けるじゃない?」
赤い服の女が言った通り、エレベーターは3秒もしないうちに1階に着いた。
3秒…?早すぎる…普通10秒くらいかかるんじゃ…??
呆気に取られていた私を促すように赤い服の女は、またね。と手を振ってエレベーターを出て右の方向へ歩いて行った。
私も降りなきゃ!と慌てて出るとつまづいてエレベーターの前で転んでしまった。
「大丈夫ですか?」
見上げると少し白髪のかかった気品のあるおじいさんとおばあさんが私を心配そうに見ている。
スーツ、、と、赤いドレス、、。またも病院にしては似つかわしくない、、。
おじいさんが私を起こそうと手を差し伸ばした。すると、
「2028年です。2028年に地震が来ます。とても大きな地震です。頑張ってください」
「え…そんな…生きてないですよ!2028年なんて…!」
私は勝手に言い返していた。
おじいさんは微笑んで
「大丈夫です。あなたなら、きっと、乗り越えられます」
と言い、私の手を握った。横にいる赤いドレスのマダムも微笑んで私を見ていた。
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