第一章 「僕の純潔を返せっ!」

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「それでは僕はここで」 礼儀正しく一礼すると、ゆっくりと降り口へと向かう。 すると老婦人は僕の背中に声をかけてきた。 「親切に教えてくれて、有難うね」 「いえいえ、それではお気をつけて」   あのようなお人好しの老人たちが、卑劣な詐欺に引っかかるんだろうなあ……。   僕は駅の階段を上りながらしみじみとそう思った。   すると背後から聞きなれた声が鼓膜に届く。   「お年寄りにいい加減な知識を刷り込んじゃダメでしょっ!」     「僕は嘘なんて言ってないよ」     「じゃあ何なのよ、ガンミサレティックシンドロームって! そんな病気無いでしょ? って言うか人が話してる時は、ちゃんとこっちを見なさいっ!」
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