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「それって、もしかして僕?」
「えっ、どうしてそう思うの?」
「だって壇さんって、僕のことだけ名前で呼ぶから……」
「ああ、そっか」
壇さんは納得するように、手のひらをパチンと合わせる。
そしてすぐに気まずそうに俯くと、静かに口を開いた。
「うちのクラスって佐藤って男子二人いるじゃない? ややこしいから区別してただけなんだけど……」
えっ? 一瞬、自分の耳を疑った。
「因みに他意は?」
「ごめん、皆無」
はい、終了――。
「……お疲れっした」
僕は鞄を手に取ると、逃げるように教室をあとにした。
もう、嫌っ! いっつも、いっつもこうじゃないっ!
赤面する顔を両手で覆いながら、僕は夕日が差し込む廊下を全速力でかけ抜けた。
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