第一章 「僕の純潔を返せっ!」

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「それって、もしかして僕?」   「えっ、どうしてそう思うの?」   「だって壇さんって、僕のことだけ名前で呼ぶから……」     「ああ、そっか」   壇さんは納得するように、手のひらをパチンと合わせる。 そしてすぐに気まずそうに俯くと、静かに口を開いた。   「うちのクラスって佐藤って男子二人いるじゃない? ややこしいから区別してただけなんだけど……」   えっ? 一瞬、自分の耳を疑った。 「因みに他意は?」   「ごめん、皆無」 はい、終了――。   「……お疲れっした」 僕は鞄を手に取ると、逃げるように教室をあとにした。 もう、嫌っ! いっつも、いっつもこうじゃないっ!   赤面する顔を両手で覆いながら、僕は夕日が差し込む廊下を全速力でかけ抜けた。
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