第四章 彼女は

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「よりはね、ここ一か月くらい毎日放課後に、ここで練習してたんだよ。ゆうのお別れ会で歌いたいって先生に言ったら、内緒で開けてくれたんだ」 「ええ!? なにそれいいな! ていうか、一か月も練習してたの!?」  クラスのみんなが知ったら、めちゃくちゃうらやましがられること間違いなしな話だ。みんな出し物の練習場所に困って、屋外トイレの裏とかでやってたくらいなのだ。こんなことを秘密にしていたなんて、全く先生も人が悪い。  それにもう一つの方も驚きだ。一か月も練習していたなんて、そりゃああれだけ素敵な歌が歌えるわけだ。  全く私は、彼女について何も知らない。 「知らなかったでしょ?」 「ああ、うん。全然、知らなかったんだね私」  私は両手を掲げて、今日三度目の降参のポーズを取った。きっと私は、友達になれたとしても、絶対に彼女には敵わなかったろう。  彼女は満足げに大きく息をつくと、ゆっくりと手を突き出し、シュバっと三本の指を折り曲げピースした。 「ひっひひー! これでぜーんぶ、よりの勝ち」
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