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エピローグ
校舎から出ると、強い風が私の身を打ち震わせた。
取りに行ったのがパーカーでよかった。もし薄着のままだったら、凍えてしまっていたかもしれない。そこまで考えてふと気になった。そういえば彼女は上着を持ってきていたのだろうか。
校舎の下からでは見えなくなってしまった屋上を見上げる。姿は見えないが、彼女はまだきっとそこにいて、最後の屋上を満喫しているのだろう。
その時上から吹きすさぶ風に乗って、かすかに歌声が聞こえてきた気がした。
きっと彼女は大丈夫だ。何の根拠もないけど、私に向かって高らかに勝利宣言をする彼女が、こんな風ごときに負けてしまうなんてありえないと思った。
私は何となく、校舎に向かって大きく一回手を振り、小学校生活の大半を過ごした学び舎を後にした。
さようなら、さようならと、うわごとのように呟きながら。
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