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「昼飯は、俺が買ってくるから!1人で買えるから!」
俺は、運転で疲れているだろう穂高を車内に残し、1人で昼ごはんを買いに行くことにした。
「うん、ここまで来れば心配ないかな。知らない人について行ったらだめだよ?」
頭も撫でてくれる穂高に笑顔を向け、うんうんと頷く。
「あ、そうだ。この旅の思い出に、写真撮ろうか。」
そう言った穂高は、近くの車から降りてきた男の人にスマートフォンを渡して写真を頼む。
「せっかくだから、サービスエリアが入るように撮って貰おう。」
穂高と手を繋ぎ、サービスエリアの名前が入るように立つ。
写真に慣れていない俺は緊張してしまい、穂高の手をぎゅっと握りこんでしまった。
ふふっと穂高の笑い声が聞こえ、俺は少し不機嫌な顔をした。その瞬間、撮りますよー!という男の人の声と、カシャっという小さなシャッター音が聞こえた。
撮ってもらった写真には、楽しそうに笑う穂高と、不貞腐れた俺が写っていた。
せっかくの写真なのに。もっと笑ったやつがよかった。
そう思ってしょんぼりしていると、穂高が俺の肩を抱き、頬をくっつけてスマートフォンを目の前に構えた。
「もう1枚撮ろう。今度は笑ってね?」
穂高のその提案に俺は嬉しくなり、ニッコリ笑ってスマートフォンを見つめた。
「ちゅっ」
頬に柔らかな感触を感じて驚いた時には、撮影は終わっていた。
「ふふ。千春のほっぺ、柔らかい。」
穂高が頬にキスしたのだと気付いた俺は、体温が急激に上昇して行くのを感じた。
「穂高、お前、急に、なにすんだよ!」
「春が可愛かったから、つい。さっきの写真と一緒に、春のスマホに送っておくね。」
ニコニコと機嫌の良い穂高は、これ待ち受けにしようかなぁ。と、言いながらスマートフォンを操作している。
「お、おれ、飯買ってくる!ちゃんと俺にも送っておけよ!!」
俺は胸の奥のむずむずに耐えきれず、サービスエリアの建物に向かって走った。
その時の俺の顔は、穂高以上にニヤニヤしていたのだった。
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