22人が本棚に入れています
本棚に追加
その後。
父は狂ったように怒鳴り出し、キッチンにあった食器を俺に向かって投げた。
食器棚に入っていた家族3人の色違いのお皿。
母が気に入っていたマグカップ。
俺達家族の思い出が詰まった食器達が、
粉々になって床に散らばっていた。
棚の中の食器が無くなった父は、シンクの中から包丁を手に取った。
俺に向かって歩き出そうとした所で、母が帰宅した。
めちゃくちゃになった居間。
俺に刃物を向けている父。
それを見た母は叫び声を上げてその場にうずくまった。
俺は、粉々になった父の茶碗をずっと見つめていた。
今まで楽しく過ごした日常も、粉々になっちゃうのかな。と、ぼんやり思った。
母の叫び声を聞きつけた村の人達が家に入って来て、父が俺の事を説明していた。
「あいつは、化け物だ。俺の息子じゃない。」
父の話を聞いていた人達は、父と同じように顔を青くし、俺を見つめていた。
「神主様の所へ連れて行きましょう。」
隣の家のおばさんの提案に、父も母も頷いた。
こうして俺は、家を追い出され、神主の管理する神社に住まう事となったのだ。
「あなたは神より特別な力を授かった神子です。神子様はこの部屋から出ては行けません。外は邪気に溢れ、神子様の力を削いでしまうのです。部屋から出る時は、神主である私が促したその時のみです。」
神主が言っている事は、幼い俺にはほとんど理解出来なかった。聞きたいことがたくさんあるはずなのに、老いた神主の冷えた瞳が恐ろしく、声を出すことが出来なかった。
「1日8時間は、私の息子である穂高と勉学に励んで頂きます。それでは。」
そう言い捨てた神主が部屋から出ていき、閉まった扉から、ゴンっという大きな音が聞こえた。
目の前から神主が姿を消し、我に返った俺は扉を押して外へ出ようとした。
しかし、扉が開くことはなく俺はその場にしゃがみ込んだ。神主は、扉に頑丈な關を掛け、俺をその部屋に閉じ込めたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!