一章

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その後。 父は狂ったように怒鳴り出し、キッチンにあった食器を俺に向かって投げた。 食器棚に入っていた家族3人の色違いのお皿。 母が気に入っていたマグカップ。 俺達家族の思い出が詰まった食器達が、 粉々になって床に散らばっていた。 棚の中の食器が無くなった父は、シンクの中から包丁を手に取った。 俺に向かって歩き出そうとした所で、母が帰宅した。 めちゃくちゃになった居間。 俺に刃物を向けている父。 それを見た母は叫び声を上げてその場にうずくまった。 俺は、粉々になった父の茶碗をずっと見つめていた。 今まで楽しく過ごした日常も、粉々になっちゃうのかな。と、ぼんやり思った。 母の叫び声を聞きつけた村の人達が家に入って来て、父が俺の事を説明していた。 「あいつは、化け物だ。俺の息子じゃない。」 父の話を聞いていた人達は、父と同じように顔を青くし、俺を見つめていた。 「神主様の所へ連れて行きましょう。」 隣の家のおばさんの提案に、父も母も頷いた。 こうして俺は、家を追い出され、神主の管理する神社に住まう事となったのだ。 「あなたは神より特別な力を授かった神子です。神子様はこの部屋から出ては行けません。外は邪気に溢れ、神子様の力を削いでしまうのです。部屋から出る時は、神主である私が促したその時のみです。」 神主が言っている事は、幼い俺にはほとんど理解出来なかった。聞きたいことがたくさんあるはずなのに、老いた神主の冷えた瞳が恐ろしく、声を出すことが出来なかった。 「1日8時間は、私の息子である穂高と勉学に励んで頂きます。それでは。」 そう言い捨てた神主が部屋から出ていき、閉まった扉から、ゴンっという大きな音が聞こえた。 目の前から神主が姿を消し、我に返った俺は扉を押して外へ出ようとした。 しかし、扉が開くことはなく俺はその場にしゃがみ込んだ。神主は、扉に頑丈な關を掛け、俺をその部屋に閉じ込めたのだ。
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