一章

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それから8年が経ち、気づけば俺は14歳になた。 俺は毎日穂高と2人だけで過ごし、月に2~3回は神社に訪れる怪我人や病人を癒す為、部屋から出ておいのりをしていた。 「神子様、祈祷のお時間でございます。」 3回のノックの後、神主が声を掛けてきた。 ここに来たばかりの頃の神主は、頬が痩け厳格な雰囲気を持っていたのだが、 今は醜く肥えて、まるでガマガエルのようだと思った。 「解った。着替えたらすぐに行く。」 穂高がくれたTシャツと半ズボンを脱ぎ、着物に腕を通す。 最初の頃は神主が着物を着せてくれていたが、着替え中に浮かべるニヤニヤとした表情が気味悪くなり、着付けを覚えたのだ。 引きこもり生活のおかげか、俺の肌は白く、筋肉もほとんど着いていなかった。 パッチりとした2重の瞳の周りを長い睫毛が囲っていた。 「春は美人だよね。本当に神様みたいだ。」 穂高はそう言っていたが、自分では良くわからない。 神社で暮らすようになってから、同年代の人間には1度も会って居ない。おまじないをかける相手のほとんど老人だった。 神主も、おいのりの依頼相手も、皆俺を褒め称えるが、それは俺の能力に畏怖しているからなのだ。 穂高が俺を美人だと言うのも、身内の欲目のようなものなのだ。
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