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「あのクソじじい、なにが「神子様は世間知らずな子供です」だ!世間なんて知るわけねぇーだろ神社に引きこもってんだから!」
「千春…まぁ、落ち着きなよ。父さんは千春がここから逃げ出す事を恐れて、あんな言い方しただけだから。」
穂高の言う事も一理ある。しかし、何かと俺を蔑んでくる神主には毎度苛立つのだ。
「俺の力を使って金儲けしてくるくせに、毎度毎度偉そうに。」
「確かに、父さんの態度は息子の俺でも呆れるよ。でも、こんな事も後2年の我慢だろう?」
そう、後2年の我慢なのだ。
俺は、神主が恐れている通り、ここを出て行く。
「そうだよな。16歳になれば、怪しまれずにアルバイトも出来るし。たった2年だ。ここに入れられた8年に比べたら、一瞬だよな。」
穂高は、俺が外の世界でも生きていけるよう、様々な事を教えてくれていた。
最初は、「普通」を覚えるのにそうとう苦労した。
俺は、食事は勝手に用意される物だと思っていたし、衣類は知らぬ間にキレイになるものだと思っていたのだ。
何も無いこの部屋は、何かをする必要がないのだ。
穂高は、子供が自然と身につけるはずの常識を、一つづつ丁寧に俺に教えてくれた。
買い物の仕方はもちろん、お金の種類も解らなかった頃に比べ、俺はかなり「普通」を習得していた。
「そう、あと2年しかないんだよ。それまでに覚えるべき事はまだまだあるんだ。今日は、地理の続きを教えるね。」
穂高がこっそりこの部屋に持ってきたノートパソコンを起動する。
このノートパソコンのお陰で、俺は様々な知識を手に入れる事ができた。
あと2年だ。
16歳から、俺の本当の人生が始まるんだ。
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