二章

2/12
前へ
/87ページ
次へ
「千春、準備は出来たかい?」 今日俺は、この神社を出て行く。 「準備なら何年も前から出来てるよ。」 数枚の着替えと、穂高名義のスマートフォンだけが入ったリュックを肩にかける。 荷物は、最小限にした。 「本当に御両親には会わなくていいの?」 穂高は形のいい眉を下げ、寂しそうな顔をしている。 「そんな顔すんなよ。父さんと母さん、子供も生まれて幸せにやってるんだろ?今更俺が出てって、水指すことないだろ。」 「千春は、それでいいの?」 この神社に入れられてから数年は、両親に会いたいって毎日思ってた。だけど、どんなに泣いても喚いても、会えるわけが無かった。 そして、気付いたのだ。 両親は、俺に会いたいと思っていないのではないかと。 「それでいいんだ。俺には、穂高がいるし。」 寂しい気持ちを打ち消すように、微笑む。 「そっか…解った。じゃあこのまま誰にも会わずに出発しよう。」 俺は、パーカーのファスナーをきっちり上まで上げる。 そして、昨日穂高と話した事を思い出す。 .
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加