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「千春、準備は出来たかい?」
今日俺は、この神社を出て行く。
「準備なら何年も前から出来てるよ。」
数枚の着替えと、穂高名義のスマートフォンだけが入ったリュックを肩にかける。
荷物は、最小限にした。
「本当に御両親には会わなくていいの?」
穂高は形のいい眉を下げ、寂しそうな顔をしている。
「そんな顔すんなよ。父さんと母さん、子供も生まれて幸せにやってるんだろ?今更俺が出てって、水指すことないだろ。」
「千春は、それでいいの?」
この神社に入れられてから数年は、両親に会いたいって毎日思ってた。だけど、どんなに泣いても喚いても、会えるわけが無かった。
そして、気付いたのだ。
両親は、俺に会いたいと思っていないのではないかと。
「それでいいんだ。俺には、穂高がいるし。」
寂しい気持ちを打ち消すように、微笑む。
「そっか…解った。じゃあこのまま誰にも会わずに出発しよう。」
俺は、パーカーのファスナーをきっちり上まで上げる。
そして、昨日穂高と話した事を思い出す。
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