とある召使と王女のハロウィン

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10月31日。 今日が何の日なのかは言わなくても解るだろう。 今日はお子様が待ちに待った楽しみの日。 そう、ハロウィンである。 そんな日に甘い物が大好きな彼女が何もしない筈がない。 そう言うワケで彼女は、朝からずっとキッチンに引き籠もっている。 キッチンからは甘い匂いが漂ってきて、思わずその匂いに連られそうだ。 そのキッチンにはやはり、紫の彼奴が居た。 神南(こうなみ)弥王(みお)、もといミオン・ルーンである。 便宜上、彼女の偽名である「弥王」で話を進めることにする。 「さーて、公爵とかどんな悪戯してやろうかなァ。 あぁ、考えただけで楽しくなってきたな」 お菓子を作りながら弥王は、そんな悪巧みをしていた。 毎年、弥王と彼女の相棒である神谷(こうや)璃王(りお)から彼女達の上司であるグレア・ファブレットへの悪戯は容赦ない。 弥王と璃王の辞書に「限度」と言う言葉は存在していないのである。 しかも、2人はお菓子を貰っても悪戯するので(たち)が悪い。 それは、英国の女王であり、弥王達の直属の上司でもあるグレイ・ゼル・ファブレットに吹き込まれたから悪質になってしまったのだが。 ちなみに、弥王が朝からせっせとお菓子を作っているのは、彼女の部下である神月(こうつき)明日歌(あすか)やJ・クレッジェ、璃王の部下であるカナメ・リハルから「菓子寄越さなきゃ悪戯するぞ」と言われた時に悪戯されない為の保険だ。 何気に弥王は、自分の保身だけはきっちりしている。
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