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弥王はヒソヒソと聞こえる黄色い声に、内心でうんざりしていた。
「あっ、弥王様!ご機嫌麗しゅう。
お久しぶりですわね!」
屋敷に入ると、1人の少女に声を掛けられた。
綺麗な栗色の髪を右サイドに上げて緩いウェーブを掛けている。
翡翠の幼さの残る大きな目が特徴の少女。
弥王は彼女の姿を認めると、頬を緩めた。
「あぁ、アーシャじゃないか、久し振りだな。
随分と可愛らしい格好だね」
「もう、弥王様ったら相変わらずマスクが甘いんだから!
でも、ありがと!
所で、璃王様は居ないの?」
キョロキョロと辺りを見回しながら、アーシャと呼ばれた少女は弥王に問う。
彼女は、弥王と璃王が王宮に居た時に通っていた学校の同級生。
どうやら彼女は、璃王目当てで来たようだ。
相変わらずの彼女に弥王は笑顔で答える。
「璃王なら、公爵と一緒に来てる筈だから、ホールに行けば会えるんじゃないか?」
「そっか、ありがとう、弥王様!
じゃあ、また後で!」
「やれやれ」
王宮に出入りする貴族だとは思えない振る舞いで、アーシャはホールの方へと行ってしまった。
それを弥王は肩を竦めて見届ける。
彼女は、学校に居た時から璃王を物凄く気に入っていた。
それでよく、彼女は自分の兄と喧嘩をしていたな、と弥王は遠くを見る様に思い出す。
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