とある召使と王女のハロウィン

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ホールへ行くと直ぐに、グレアの居る場所が解った。 何人もの女性に囲まれて談笑している白銀のショートヘアーに藍色の目の長身の男性。 彼の姿ははっきり言って目立つので解りやすい。 弥王は彼――グレア・ファブレットに気配を気取られぬよう、背後からこそっと近付いて行く。 グレアは女性達との会話に夢中らしく、背後から迫る弥王に気付いていないようだ。 「トリック・オア・トリート&トリック?」 「うわっ!」 弥王がグレアの耳元に低く囁けば、突然零距離から聞こえた囁き声に驚いたらしいグレアが跳び上がるように弥王から離れた。 振り返ったグレアの豆鉄砲を喰らったような表情を見て、弥王はお腹を抱えて笑う。 「うはっ、何その顔、公爵反応良すぎ、ウケる」 「神南(こうなみ)・・・・・・ッ、お前!」 爆笑している弥王にグレアは咎めるような声を上げる。 しかし、弥王には何一つ聞いていないようで未だに笑っていた。 「耳元で悪趣味な囁きをするな!心臓が止まるかと思っただろ!と言うか何だよ、「トリック・オア・トリート&トリック」って!菓子をやっても悪戯するのか、いや、悪趣味な悪戯をした後に言うか、それを!」 恨めしげに弥王を睨み捲し立てる、グレア。 未だにドクドクと心臓が脈打って、若干苦しい。 しかし、弥王はそんなグレアを気にも留めず、彼の取り巻きの女性達と談笑していた。
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