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直後のキスは少し苦く、そのことにもまた淫靡なうしろめたさと悦びが生まれる。
光が放ったものを、清正の指が掬う。それをまとった人差し指が尻の孔に押し当てられた。
滑りを塗り込むようにされて「くすぐったい」と抗議すると、清正は首を傾げて笑ってみせた。
「光、ここ使うの、知らないんだよな」
「どこ?」
「お尻の孔。ここに、俺のコレを、挿れる」
熱いものを指の中に握らされ、噛んで含めるように言われた。けれど、想像しただけでそれは絶対に無理だろうと思い、光は眉をひそめた。
「はいんないと思う」
「はいんなくても、挿れるの」
えー、とさらにしかめた顔にいくつものキスが落ちる。
「光、おまえマジで可愛い。めちゃくちゃにしたい」
「な、……っ」
何を言っているのだと思うが、清正があまりに幸せそうに笑うので、よくわからないながらも光は清正を許した。
「清正……」
腕を伸ばして抱き付く。
清正の肌は温かく、少し湿っていて気持ちいい。キスがしたくなって唇を寄せると、小さいキスと、軽く唇を舐めるキスと、深くて官能的なキスが繰り返し与えられた。
「清正、好きだ……」
「うん」
ぎゅっと抱きしめられて胸がいっぱいになる。光の髪を清正が何度も撫でた。
「光……、あの時、起きてたんだな」
あの時というのは、おそらく十二年前の五月のことだ。
薔薇の下の記憶。
「うん」
「俺、どうしても光の唇に触れてみたくて、寝てるとこ盗んだ」
「うん」
胸の奥がズキリと痛んだ。同時に、笑みが零れる。
ああ、あれは夢などではなかったのだ。そう思った瞬間、心が、羽根が生えたように軽くなった。
「キスをして、それから俺は、これはヤバイと自分に言い聞かせた。これ以上はダメだと思って、逃げるように目を逸らしてきた。なのに、おまえは……」
Under the Rose――薔薇の下には秘密がある。
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