【20】 ※R18

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「全然高くなかっただろう。あれにはそれだけの価値があるんだよ。人に欲しいと思わせれば、どんなに高くても買わせることができる。いい証明になったね」  これからもどんどん高額商品を売り出して、たくさん利益を上げようと堂上は張り切っている。  結局、清正をけしかけ、光の中の秘密の鍵を開けさせて、一番得をしたのは堂上だったのではないだろうか。どこまでも抜け目のない男だ。 「光、ここにいたのか」  ようやく一息吐いた連休の三日目、庭に出てスケッチをしていると、テラスドアから清正が顔を出した。聡子が上京していて、少し前に汀と動物園に出かけていったところだ。 「暑いから、昼飯、素麺でいいか」 「うん」   庭は楽園の季節を迎えていた。  青いベンチの隣に清正が腰を下ろす。花は歓喜に満ちて勢いよく咲き誇っている。それをいくつか写し取ったスケッチを、清正は眩しそうに見下ろした。 「光は、いつもここで絵を描いてたな」 「そうかも」 「あの日も、そうだった。スケッチブックを抱えて、うたた寝してた」  うん、と微笑んだ光を清正が抱き寄せる。 「薔薇の下には秘密があるのか?」 「うん。大事なものは秘密にしておくんだ。誰にも壊されないように」 「なるほど」  清正が光の手からスケッチブック取り、脇に置く。 「だったらこれも秘密だな」  そう言って、零れるアンジェラの下で光の唇を啄んだ。                                                      了(2018.2.28)                 (2018.12.21改稿)
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