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【3】
翌日の昼まで清正の家で過ごし、午後になってから秩父にある工房にクルマを走らせた。
村山樹脂は特殊な樹脂制作を請け負う個人の工房で、雑貨の試作品製作を多く手掛けている。工房主の村山は三十代後半の背の高い痩せた男で、比較的新しい素材を扱っているわりに職人気質で頑固だった。
光も相当頑固なので何度も言い争いになり、険悪になって付き合いが途絶えかけたこともある。けれど、その度にどちらかが代替案を考え出し、一度はダメだと断った内容に再検討を加えて別の形の提案をし、歩み寄る努力を繰り返して、最終的に互いの考えを一つにするような製品を作り上げてきた。
その結果、今では強い信頼関係が築かれている。
「おい。日曜日だぞ」
工房のドアを叩くと、髭も剃っていない村山が呆れたように出迎えた。
「だって、いると思ったし」
「いるにはいるけどよ」
休みの概念がないのはお互い様かと諦めたように作業場に招き入れる。
「例のやつだろ」
依頼主ごとに試作品を管理している鍵のかかった保管庫から、光が頼んでいた照明器具の見本を運んできた。
「こんな感じでどうだ?」
四角い物体の角の部分を指して村山が聞く。
一見カッチリと尖って見える部分がわずかにカットされている。その部分を指で触れて、光は頷いた。
村山が同じデザインの別の試作品を選び出す。
「そっちは目立たないように薄くカットしたほうな。で、こっちはカットした部分をはっきり目立たせたやつ」
光はそれも手に取った。コーナーが三角形にカットしてある。まっすぐなラインがプリズムのように光を反射する。
光は最初の製品を指差した。
「今回のデザインなら、こっちがいい」
「うん」
村山も満足そうに頷く。全体が透明ならば三角のほうも悪くないけどなと言われて、「さすがだね」と笑った。
けれど、その直後に光は唇を噛んで視線を落とした。
「どうした?」
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