【3】

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 けれど、光が届けたかったものはあれではないのだ。  もっと小さな子どものいる家庭に置いても、安心で安全な、軽やかなものを作りたかった。 「あんなの、作りたくなかった」 「また、わけわかんねえことを言うなぁ。あんたがデザインしたんだろ」 「だけど、あんなの……」 「まあ、わかったよ。あんた、口で説明すんのは下手だけど、俺の仕事を信用してくれてるのは知ってるからさ」  うつむく光の手からランプを受け取って、村山は呟いた。 「せっかくいい感じの寸法に仕上がったのにな……」  村山が箱を用意している間、光はぼんやりと照明器具の試作品を眺めていた。  外にもう一台クルマが停まる気配がして、入り口のサッシを誰かがガタガタ鳴らした。 「大悟、いるかい?」  村山が舌打ちする。 「……ったく、どいつもこいつも。カレンダーってもんを知らねえのかよ」 「あ。やっぱり、いるじゃないか……。おや? なんで、光がここに?」  仕立てのいいスーツに身を包んだ男が、優雅な仕草で作業場を横切ってくる。甘くスパイシーな香りがかすかに漂った。 「社長……」 「なんで、おまえまで来るんだよ」  大口取引先の社長である堂上に、村山はひどくぞんざいな物言いをする。  四十代の堂上は、年齢的にも村山より上だ。しかし、堂上のほうでも気に留める様子はない。どうやら個人的にも親しい間柄なようだ。  作業台の上に並ぶ照明器具を見て、堂上が聞いた。 「それは?」 「勝手に入ってくるなよ。他社の人間に試作品見られたらヤバいことくらい知ってるだろ」
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