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髪の長い子だった。
誰かと通話しているらしい。
途切れ途切れに紡がれる彼女の言葉を聞いていると、どうやら父親の訃報があったようだ。
きっと良い父親だったのだろう。
女の子はひっきりなしに嗚咽を漏らしている。
こんな風に泣いてくれる人がいるなんて、父親は幸せ者だな――と、少し羨ましくなってしまう。
僕にはこんな風に泣いてくれる人なんていない。
友達もいないし、親戚とも疎遠になっているから。
もしも母が生きていたなら、母だけはきっと泣いてくれたのだろうけれど。
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