終章 最期の日

4/7
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/219ページ
   髪の長い子だった。  誰かと通話しているらしい。  途切れ途切れに紡がれる彼女の言葉を聞いていると、どうやら父親の訃報があったようだ。  きっと良い父親だったのだろう。  女の子はひっきりなしに嗚咽を漏らしている。  こんな風に泣いてくれる人がいるなんて、父親は幸せ者だな――と、少し羨ましくなってしまう。  僕にはこんな風に泣いてくれる人なんていない。  友達もいないし、親戚とも疎遠になっているから。  もしも母が生きていたなら、母だけはきっと泣いてくれたのだろうけれど。  
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!