終章 最期の日

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   頭の片隅で母が言っている。  ――応援しているからね、結人。  僕が教師になって、立派に生きていけるようにと、母が言っている。  せっかく死ぬ覚悟を決めていたのに。  これで終わらせられると思っていたのに。  でも。  母が応援しているから、僕はまだ死ねない。  少なくとも、自殺だけはだめだ。  母が、ここまで僕を育ててくれたのだから。  それに、どうせいつかは死ぬのだから。 「……わかったよ、母さん」  母がそう願うのなら、抗えない運命の日がやってくるまで。 「もう少しだけ、がんばってみるよ」  僕が本当の屍になる、その日まで。  弱々しく呟いた僕の声は、走り去る電車の轟音に掻き消された。  
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