第一章 君の屍が視える

3/62
前へ
/219ページ
次へ
  「二番線に、普通電車が参ります」  聞き慣れたアナウンスが流れ、線路の先からは電車がやってきた。  金属同士が擦れ合う轟音とともに、車両はホームへと入ってくる。  散らばった肉片には目もくれず、その上を何食わぬ顔で走行し、やがて停まる。  扉が開き、乗客が出入りを終えると、まるで何事もなかったかのようにまた出発する。  再び露わになった線路上には、先ほどと同じピンク色の肉片が散らばっていた。  電車が過ぎ去っても、何一つとして変わらない。  細い右腕だけが相変わらず美しく、原型を留めている。  
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加