第1章

10/28
前へ
/28ページ
次へ
そこまでしてようやく。 非情にも男は彼の小さな体を 彼自身が作ったその水たまりの上に投げ捨てた。 可哀想に――。 少年の方は店を出てきた時と同じように いやそれ以上に打ちひしがれて。 よろよろ立ち上がると 狂ったように喚きながら走り去る。 反対に男の方は 自分のした仕打ちを振り向くことさえなかった。 表情一つ崩さず唇を拭うと クルリと踵を返して。 (わあ……) 綺麗な顔して 堂々とこちらに向かって歩いてくる。 (こちらに向かって……?)
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加