69人が本棚に入れています
本棚に追加
そこまでしてようやく。
非情にも男は彼の小さな体を
彼自身が作ったその水たまりの上に投げ捨てた。
可哀想に――。
少年の方は店を出てきた時と同じように
いやそれ以上に打ちひしがれて。
よろよろ立ち上がると
狂ったように喚きながら走り去る。
反対に男の方は
自分のした仕打ちを振り向くことさえなかった。
表情一つ崩さず唇を拭うと
クルリと踵を返して。
(わあ……)
綺麗な顔して
堂々とこちらに向かって歩いてくる。
(こちらに向かって……?)
最初のコメントを投稿しよう!