第1章

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ぼんやりと見惚れている場合じゃなかった。 ここで鉢合わせすれば 今のとんでもない寸劇を覗いていたのは見え見えだ。 しかしまずいことに 気付いた時には既に逃げ道なんかなくて――。 「わゎ……っ!」 今来た道をつかつかと戻って来る 美男子の迫力に気圧されるように 僕は後ろ向け後退する。 しかしそこはコンパスの差だ。 思いのほか、彼の前進は早く――。 しこたま酔ってその上焦りに焦った僕は 雨上がりの滑る地面に足を取られて。 「うわっ……!」 「え……?」 そのまま――。
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