第1章

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「タクヤ、タクシー乗ってけって」 店の外に出ると まだ10月の半ばだと言うのに凍えるほど冷えていた。 「いい。歩きたいんだ」 「なら気をつけて帰れよ」 友人の好意を断り白い息を吐きながら 僕は危うい一歩を踏み出す。 新宿の雑踏を抜け裏道へ。 酔い覚ましのつもりだった。 さっきまで小雨が降っていたのか 湿り気を帯びた黒いアスファルトがてらてらと光っている。 何もかももう十分――。 それでも家に帰る気にはならず 僕はあてもなく歩き続けた。 「ん……?」 やがて暗いビルの一角。 風変りなネオンの灯る店の扉が開いて 「うわっ……!」 若い男が一人 ひどく泣きながら僕の目の前に飛び出してきた。
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