第1章

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その後からもう一人 長身でびっくりするほど綺麗なバーテン風の男が飛び出してくる。 「――キダリョ!キダリョラ!」 韓国語だった。 『待て!待てよ――』 学生時代に齧っただけだが、即座に頭が翻訳した。 理由は簡単。 こんなに酔っていても分かるほど彼が僕のタイプでその上――。 通りすがりにほんの数秒。 駆けてゆく彼と目が合った。 くっきりとした切れ長の瞳。 野性味のある目の光が僕を射竦め 「な……」 吸い込まれるように時間が止まって身がすくむ。 次に心臓が動き出すまでどれぐらいあったか知れない。 店の裏手。 先刻の2人が韓国語で激しく言い争う声がして 僕ははたと我に返った。
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