第1章

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暗くてよく見えないが1万円札を抜いたようだった。 するとマネキンのように見栄えのいい男は 迷いもなく長い指の間にそいつを挟んで受け取った。 そして――。 (えっ……!?) 器用に畳んだ札をシャツのポケットにしまいながら 小柄な彼の後ろ頭を強引に掴むと。 (嘘……) そのまま 引きずるように自分の方へ引き寄せて 窒息しそうな激しいキスで唇を塞いだ。 「ンン……」 苦しげな呻き声。 小柄な少年の身体は その力強さに逆らえず時折宙に浮いたようになる。 それでも艶めかしい腰つきで 美しい影は奪い尽くすように彼に食らいついた。 だいぶ長い時間そうしていたと思う。
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