バトン

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ー 半年後 ジーパンにTシャツのラフな格好で哲也は金剛駅から電車に乗る。通い慣れたこの駅も高校進学から数えて8年目だ。いつもと変わらない風景に心が落ち着く。 あれから・・・ フタバ製菓のWEB応募の結果、次の選考に進み2次・3次と面接を重ね最終面接へ進んだ。 最終面接では、社長に、フタバ製菓へのまっすぐな思いをぶつけた。内定の通知をもらったのは大学卒業間近の2月だった。 入社したフタバ製菓では営業部に配属になった。新人のうちは先輩について行き受注や納品、新規の顧客獲得などを勉強中だ。 覚えることが多いが、やり甲斐を感じている。何より自分が好きなものに関われることが嬉しい。一人で得意先を回れるようになることが当面の目標だ。 今日は土曜で仕事は休み。北野田駅に着くと、電車を降り、ある場所へと向かう。就職が決まった2月から時間がある時は、おっちゃんの手伝いをしているのだ。 大美野ファウンティン通りを進むと、昔と何も変わらないマエダの看板が見えてきた。 中矢哲也には夢がある。何年後、何十年後になるかわからないが、いつか自分の店を持つことだ。駄菓子屋かもしれないし、別の店かもしれない。 哲也が幼い頃通ったマエダのような、あたたかく笑顔が溢れる店をいつか作りたいと思っている。
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