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「というか深見、お前結構、調査に出るの楽しみだったんじゃないか?」
「別にそんなんじゃないです! こんなムチャぶり楽しいわけないでしょうが!」
ニヤニヤと嫌な種類の笑みを浮かべる椹木さんに、冗談じゃないと言い返す。俺の勢いに圧倒されたように、椹木さんは「わかったわかった」と両手を上げた。
「探偵には臨機応変さが求められるって、読んだ本に書いてなかったか? 適材適所だって。それになあ、浮気調査はカップルを装うのが一番都合がいいんだぞ? ラブホ入られても中まで追いかけられるだろうが」
「ラブ……ッ」
「大丈夫だって、なにごともチャレンジだっつったろ?」
「だったらあんたがやれよ!」
「あっははー、俺が似合うわけねえだろ。第一服入んねえって」
「悪かったなチビで!」
「ま、とにかく着てみろって。奥の部屋貸してやるからさ」
そう言って指をさしたのは、椹木さんの居住スペースだった。ちらっと視界に入ったことはあるが、未だ入室したことはない。椹木さんのモロなプライベート空間など、気にならな……くもないが。
「ほら、早く。出発時刻になっちまうぞ?」
「……ほんとにムチャぶりばっかなんだから」
これみよがしな溜息を吐いて、重い足取りで奥の部屋の扉を開けた。
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