第5章

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 ひとりきりの事務所は静かで……静か過ぎて逆に落ち着かないし、何かが物足りない。  事務作業を終えて少し遅めの昼食をとる。午後からは特にやることがなくなってしまったので、貧困に喘ぐこの事務所の対策に乗り出すことにした。ホームページでも開設してみようかとネットを回る。そっち方面は専門外だけど、知識さえあれば簡単にできそうだ。ネット社会の現代で、なんのWEB対策もしていないのは損すぎる……というかありえない。まあ、所長がPCオンチだから仕方ないといえば仕方ないのだけど。  他の探偵事務所のホームページを見回り、どういう要素が必要なのか調査をしてメモっていく。  やはり一番は安心感を与える文言。自分たちは悩めるあなたの味方なのだとアピールすること。明瞭な料金表示も効果的だろう。調査費用が安いのはうちの事務所の強みでもあるし。そして調査事例。実際にこういう依頼がきて、結果を出した、依頼主は満足した、という紹介。……とは言っても、俺の知る限りでは探偵事務所としての仕事はまだ二件しか受けていない。  テキストファイルを呼び出すと、午前中に進捗をまとめたばかりの、アイカさんのストーキングの案件が表示された。  対策が功を奏したのかここ三日は尾けられている気配がないということだった。このまま落ち着いてくれればいい。そうすれば、椹木さんとアイカさんの接点だってなくなる。……そこまで考えて、自分の思考にぎょっとした。
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