第5章

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 いつだって唐突だった。あの人は。マイペースでムチャぶりばっかで、俺を好き勝手に振り回す。  あんな狭い部屋にあんなバカデカイ事務机。俺がいなくなって使いもされなくなったら、ただの粗大ゴミじゃないか。それとも誰かが代わりにあの場所に座るのだろうか。  部屋に帰り着いても、むしゃくしゃしたような気分は収まらなかった。ノートPCの入ったバッグをデスクに置いた時、B5サイズのルーズリーフの走り書きが目に飛び込む。昨夜、ホームページ作成のために調べ物をしていた時にメモしたものだった。 「……っ」  用紙をわし掴んで丸めた。ゴミ箱に叩きつけるように捨てたら、跳ね返って床に転がって、怒りが倍増した。 「あのクソオヤジっ! 勝手なことばっか言って!」  怒りのままゴミ箱を蹴飛ばしたら、当たり所が悪くてめちゃくちゃ痛かった。痛すぎて、涙が滲んだ。  最初から、椹木さんと関わらなければよかったのだろうか。と言っても絡んできたのは向こうだけど。でも、強引なその手をもっと必死になって振り払って、逃げればよかったのだろうか。
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