第6章

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 その後、アイカさんを自宅に送るため、三人でタクシーに乗った。その中で、椹木さんはアイカさんの意思を確認した上で、これで森下がつきまといをやめるのであれば、森下が起こした一連の騒動を警察沙汰にしないことを決めた。俺はそれを聞いて少しほっとした。やっぱり、どうしても、森下には同情してしまうから。  アイカさんの自宅マンション前までつくと、彼女を見送るために俺と椹木さんもタクシーから降りた。 「それじゃあ椹木さん、送ってくれてありがと。……あなたも」  アイカさんにちらりと視線を送られて、「あ、いえ」とドモる。 「もし何かあったらすぐ連絡をしてくれ」  椹木さんの言葉に頷きかけて、アイカさんは椹木さんをじっと見た。 「何かなくても……連絡しちゃダメ?」  その言葉に思わずドキっとする。 「私、この間も言ったけどやっぱり……」  アイカさんはそこまで口にして、そして俺を気にする素振りを見せた。 「深見、ちょっと向こう行ってろ」 「え」 「いいから」 「……わかった」  俺は言われた通りに二人の声が聞こえないところまで離れた。  今二人がどんな会話を交わしているのかは想像がつく。きっとアイカさんは椹木さんに……。想像に一人焦燥感を募らせていたら、背後から声を掛けられた。
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