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「お前は若ぇから、まだまだこれから可愛い女の子と出会ったり、いい感じになったり、まあ色々あるだろ。なのに十七も上のオッサンがくっついてちゃ、せっかくのチャンスもふいにしちまう」
「そんなの、ない、しっ……絶対」
「ンなこたぁねえよ。お前は充分魅力的な人間だ。それを見つけてくれる女の子は絶対いる」
「だったら……こっちがいい……」
俺はギュッと目を閉じて、椹木さんの背中に手を回した。
まだ見ぬ女の子との出会いより、このオッサンがくっついていてくれる方がずっと嬉しい。
「俺は……椹木さんの背負うべき相手じゃないと思うけど、その、背負わなくてもいいから……ちゃんと自分で歩く、から……だから、一緒に……っ」
言い終わる前に両肩を掴まれて……心の準備する間もなく……。
「ん……っ」
キス、されている。椹木さんに……。状況を認識したら全身が心臓になったみたいに脈打つ鼓動を感じた。
「ぷ、はっ……はぁ」
キスをされている間、息を止めていたから、離れると慌ただしく呼吸をした。
「物好きだな、お前は……」
「そっち、こそ……」
言い返す俺に椹木さんが笑う。そして、見たこともない真剣な表情を浮かべた。
「俺の方こそ、傍にいてくれ。……好きだ、深見。お前が必要だ」
「……っ」
自分でもびっくりした。椹木さんにそう言われた瞬間、勝手に涙があふれて止まらなくなる。
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