第6章

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 扉が閉まる音がやたらと大きく聞こえた。部屋に入ったきり俺はそこから動けなくなる。 (俺、本当に……このまま椹木さんと……)  好きだと言われたことさえまだどこか夢みたいなのに、それでそのまま恋人みたいにキスしたり、抱き合ったり、その先のアレコレを……。 (……あ)  そこまで考えて、ふと思った。恋人みたい、じゃなくて……恋人でいいのか?  そのことに気づいて余計動揺する。 「そんなに緊張すんなよ」  棒立ちのままグルグルと考えていたら、椹木さんが手を差し出して俺を呼ぶ。  俺はぎこちない動きでベッドまで近づいた。その腕に捕らえられて引き寄せられると、椹木さんの顔が近付いてくる。 「ん……ぅ」  穿つように口を塞がれて、何度か唇を吸われた。その柔らかい感触に誘われるように無意識に唇を開くと、熱い舌が中に入り込んでくる。 「っん……は」  舌同士が触れ合って水音が立つ。くすぐるようにからめ取られると、もっと大きくいやらしい音に変わった。 (頭、ぼーっとしてきた……)  キスなんてしたことないし……いや、正確にはあるけどそれだって椹木さんとだったし、他と比べようもないけど、……きっと椹木さんはキスが上手いんだろう。だって刺激を与えられているのは口内だけなのに……気持ちがよくて背中がゾワゾワして……腰が抜けそうで足に力が入らなくなってくる。 「ん、っ……」 「……っと」  かくんと力の抜けた俺の身体を椹木さんが難なく支える。そのままシーツの上に寝かされて、乱れた息を繰り返しながら覆いかぶさってくる男を見た。
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